第6回研究会の開催報告

研究会報告

第6回 フランス抒情詩研究会 報告

2023年11月25日(土)、奈良女子大学にて、午前11時から約2時間という少し変則的な時間帯になりましたが、第6回フランス抒情詩研究会が開催されました。今回の報告は、最近は中山さんに何でも任せきりになってしまっていることを反省し、本研究会のもう一人の代表である廣田大地(神戸大学 専門:ボードレール)が担当いたします。

第6回研究会では、アポリネールをご専門とする森田いく子さんに、以下の題目でご発表いただきました。

 

「アポリネールの詩における抒情主体-声の複数性」

 

会場には、発表者を含め7名の参加者があり、またオンラインでは以前にも本研究会で発表くださったことがある(=本研究会のメンバー)方々にもご参加いただくことができました。また、今回、会場の手配やハイブリッド開催の準備をしてくださった奈良女子大学の森田俊吾さんには、あらためてお礼申し上げます。

 

今回の研究会は、偶然ではありますが、二人の森田さんにご活躍いただいた「森田」の会となりました。そこに想を得て、近々「廣田」の会の開催も検討しておりますので、ご期待ください。

 

さて、脱線しましたが、今回のアポリネールの抒情主体についてもご発表は、特にボードレールの詩を研究してきた私にとっては極めて重要で興味深い内容でした。アポリネールの詩は、まさに19世紀のボードレールを中心とした詩学と、20世紀のその後の現代詩とを結びつけるような要になるような存在です。19世紀から20世紀にかけての抒情主体の在り方の変遷を詳しく記述していこうとする私たち抒情詩研究会のメンバーにとって、アポリネールという鎖の重要な部分を補うことができて非常に嬉しかったです。

 

森田さんは、博士論文のご研究においては主にアポリネールの散文作品を中心に扱ってこられたため、今回、抒情詩研究会での発表を引き受けてから、あらためてアポリネールの詩作品と向き合い、また抒情主体に関しての主要な研究にも目を通してくださったとのことです。ご多忙な中、アポリネールの専門家として、「抒情性」や「抒情主体」の問題に取り組んでくださり、本当にありがとうございました。

 

ご発表の中で特に印象的だったのが、アポリネールがフランシス・ピカビアと彼の妻ガブリエル、そしてデュシャンと一緒にジュラ山脈でドライブ旅行をしていたときの様子を想像されていたところです。私たち聴衆も、森田さんと一緒になって、ドライブしている車の中で、どのような「声」が響き合っていたのだろう、その響き合った「声」がまさに現代芸術のひとつの源泉となっていったのだろうと思いを馳せていました。

 

また、抒情主体という特殊な枠組みを、時間軸上に広がった一種の織物としてみなし、そこにそれぞれの詩人が自分の主体をどのように組み込んでいくかという観点も、森田さん独自の抒情詩感が表れていて興味深かったです。

 

さらに詳しいテキストの分析もお聞きしたかったのですが、そのあとお昼ご飯のお店を予約してあったこともあり、時間となりました。今後、抒情詩研究会による第二弾の書籍刊行時には、森田さんによるさらに詳しいアポリネール詩作品の分析を読めることを楽しみにしています。

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